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tailorarmory周年

Tailor Armory

西区は肥後橋のたもと、土佐堀川沿いのビルの一室に店を構える、オーダースーツ専門店『Tailor Armory』。去る2月11日に開店4周年を迎えられました。

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ビシッと決めるも温厚さが滲み出る森田さん

この度は、店主の森田さんにインタビュー。当店で実際にスーツの仕立てを行なった、弊社が誇る人型レインズ(Real Estate Information Network Systems)シュワちゃんを引き連れ、立ち上げ時に直撃したコロナ禍での苦労や、“スーツ”という文化に対する熱い思いなどを、たっぷり伺ってきました。

“スーツ一筋”の人生から、外の世界へ

スーツ店の某全国チェーンに8年間勤められた森田さん。服飾系の専門学校でファッションを学ぶなど、アパレル一筋で歩んで来られましたが、「一度違う世界も見てみたい」との思いで、企業の人事職、いわゆるサラリーマンに転職されます。

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-オーダースーツの世界が好きで、楽しく働いていました。お客様の多くがオフィス勤めのサラリーマン。そういった方々と毎日お会いする中で、「自分自身が一度もオフィス勤めを経験していない。一度、そっち側の世界も見てみたいな」との思いで転職を決意します。
ビジネスマンが実用性を求めて着るスーツと、スーツ好きが着るファッション性の高いスーツって全く違うじゃないですか。そういう価値観の違いみたいなものを味わってみたかったんです。

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そんな思いを抱きながらサラリーマンとして働いている最中に、直撃したコロナ禍。「一体自分は何がしたいのか」と改めて考える時期になった休職中、行きつけの美容師さんとの雑談が、新たに動き出すきっかけになったそうです。

-「もし10億円が手に入ったら何をするか」という何気ない会話になったんですよね。その時担当の美容師さんが、「僕は、すぐに自分の美容院を開業しますね」とおっしゃったんです。
働かなくてもいいお金があっても、自分の好きなことに挑戦するーーという彼の答えに思わずハッとなりました。
そこで「自分ならスーツ屋しかないな」と思い立ち、開業に向けて動き出したんです。

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4年前に仕立てたシュワちゃんスーツ 当店第一号の品だそう

土佐堀川のほとりで見つけた“武器庫”

物件探しに動く中、知人の紹介で渋井不動産の存在を知った森田さん。来店後まもなく、トントン拍子で肥後橋にあるビルの一室に決められることに。

-肥後橋自体には縁もゆかりもなかったのですが、渋井不動産の代表さんが以前自分用のオフィスで借りられていたのがこの場所で、「僕が前に借りていたところが空きますよ」との一声で見に行きました。
南北両面に大きな窓、仕切り壁にバーカウンター、そして何と言ってもリバービュー。一瞬で「ここだ」となりました。自分自身がお店をやる前から温めていたイメージ、“武器庫”にぴったりハマったんです。店名も“武器庫”を意味する「Armory」で決まりだなと。

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コロナ禍での挑戦、「不要不急」のスーツ

無事に物件は決まったものの、開業したのは2021年2月11日。世の中は未だコロナ禍を抜け出せずにいました。人々が不要不急の外出を控える中、開業したてのオーダースーツ専門店は苦戦を強いられます。

-それはもう、大変でした。だって、街に誰も人が歩いていないんですからね(笑)。開業に向けて動き出した2020年の夏は、感染者数も少し収まっていたんですよね。しかし、そのまま終息はしませんでした。
外に出かけるためのスーツなので、もちろん需要はゼロ。何が辛いって、開業したばかりなのに「来てください」と言えない。世の中がステイホームだなんだ言っているのに、「オシャレなスーツを着て外に出かけましょう」なんて真逆のセリフじゃないですか。スーツなんて一番不要不急の存在ですもんね。
でも、そんな中でもひたすら愚直に、地道に頑張りました。来てくれたお客様に誠心誠意向き合う。ただそれを続けるしかないなと。これまでも特に変わったことはしていません。

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変えないことで、寄り添う

接客は基本、店内のバーカウンターで。対面でお客様からヒアリング、生地やデザイン、仕立て方法などを綿密に打ち合わせ、納得の一着を追求します。この打ち合わせの中で、かつてのサラリーマン時代の経験が活きるんだとか。

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オーダースーツ 価格は6万円台から相談可能

-やはりオフィス勤めのお客様が多いので、一番大事なのは「先輩や上司が何を着ているか」なんです。
上司がOKなら、このラインは大丈夫だとか。このデザインは周りから変には思われないなとか。そのニュアンスは自分が会社勤めを経験してきたから分かることです。
あくまで組織、集団の中で働くので、好き勝手自由にしていいわけじゃない。ただただオシャレに着こなしたいスーツ好きとは違うわけです。

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バンドマンやDJなどもオーダーに訪れるそう

ビジネスパーソンの思いも理解しながら、和やかなムードで打ち合わせをされる森田さんですが、店内の見本、トルソーのコーディネートは開店以来変えていないというこだわりも。 

-一般的なスーツ屋はシーズンごとに新作を展示したりするのですが、それはあまりしたくなくて。「新作です」として売り出したとしても、初めて来たお客様からしたら知らないわけですよね。
同じことをずっとしていてもニーズに寄り添っていれば、その人にとっては新しい提案になるわけです。自分のスタイルを貫くことが、逆に寄り添っているのかなとも思います。

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シュワちゃんメンテナンス中 第2形態はグレーがいいと森田さん

無駄を愛する人たちと、この場所で

働き方やファッションの多様化により、30年間で6分の1になったとも言われるスーツ市場。そんな中でも、スーツが大好きな人のために、大好きなスーツに向き合い続けていくという森田さん。

正直、これからもどんどんスーツを着る人口は減っていくと思います。ですが、無くなることもないと思っています。政財界の人たちにとっては必要なものだし、冠婚葬祭にも絶対に必要。しかし多くの人々にとっては、特別な時にしか着ないし、着方もわからない。絶対に必要ではないけど無くならない。私は、スーツは着物のポジションになっていくと考えています。伝統文化という位置付けになっていくはずです。やっぱりスーツって無駄の極致なんですよ。
そんなスーツにわざわざお金を払う、スーツを愛する人々を大切にするお店が生き残っていけるでしょうし、ここがそういうお店にならなければなと思っています。
無駄な上に必要ではないけど、自由で楽しいですよ、スーツって。

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Photo by : MIU

Tailor Armory

【住所】大阪市西区土佐堀一丁目1-5  敬明ビル 3F
【営業時間】11:30-20:00
【定休日】日曜日・祝日

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  • 『Tailor Armory』祝4周年。無駄を愛する男たちの武器庫。

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