(心の声)
今日で46日目。今日も俺は地元箕面からスタートを切る。
自分探し?いや、違う。
自分のことは自分がよく知っている。
ドライブデートの前には洗車とガソリン満タンがマイルールの律儀な男、それが俺。
はっはっ
はっはっ
自分の居場所を探しているのか?
いや、自分の居場所なら箕面に居心地の良い家がある。
サッカー選手を志して練習に明け暮れ、切磋琢磨したチームメイトもいる。
はっはっ
だったら何を求めて…
何を求めて俺は毎日毎日走り続けるんだ…?
幼少期から引っ越しを繰り返し、今では日本の地理が頭に叩き込まれ、休日には自然を求めて山・川・海へ。
とにかくじっとしているより、体を動かし、自分の目で耳で五感で感じたい。
そんなふうにただひたすら前を向いて生きてきた。
はっはっ、はっはっ
そんな俺が今、何をしたくて、何ができるのか。体力には自信がある。じっとなんかしていられない。
とにかく誰かに……
誰かに必要とされたいんだ…!
はっはっ
えっ、ここは…?大阪農林会館?農業関係の施設か?一次産業で俺が何かの役に立てるのか。
とにかく一番上を、上を目指そう。5階だ!エレベーターなんか使うもんか!
はっはっ、はぁぁぁぁ!!
ん?渋井不動産?こ、これが不動産屋?
-マックス
「いらっしゃいませ。お部屋探しですか?」
-俺
「えっ、いや、あの…
俺をここで働かせてください!何でもします!」
-マックス
「えっ、面接に来た方ですか。」
(履歴書なんて持ってなさそうだし…。それより、オリックスに入りたてのイチローそっくりだな。気になる。言いたい。すごく言いたい。でもこの真剣な眼差し…)
-マックス
「…で、キミの強みは?」
-俺
俺、いや僕は幼少期から父親の仕事の影響で引っ越しを10回以上繰り返して、今では日本の地理が頭に叩き込まれています。そんな土地勘と初対面の人とも秒で仲良くなれる特技を利用して、不動産界に革命を起こしてやろうと思ってます!
-マックス
(野球界じゃないのか。)
「なるほど。それでは、キミの長所はなんだ?」
-俺
「『それめっちゃわかるっすわー』と気持ちのいい相槌が打てることです!車・スポーツ・音楽・天気、大体の話題は機嫌よく応対できます!」
-マックス
(社会人として当然な気もするが…)
-俺
それに、俺!いや僕は6歳からサッカーを始めて、サッカーのことなら誰にも負けません!
知ってます?サッカーファンは、世界に35から40億人いると言われてるんです。ということは、僕はすでに世界の半数と”ダチ”みたいなもんなんです。
-マックス
(野球ファンじゃないのかよっ。まぁいい。)
「なかなか肝が据わってるな。」
-マックス
「……いいだろう。それではうちで働いてもらおう。キミの名前は…イチ..(さすがにだめか)キミの名前は…『マル』だ!今日からよろしく。」
こうして晴れて渋井不動産に入社を果たした『マル』。46日目にして、探していたものが”自分を求めてくれる居場所”だと気づいたのだった。
渋井不動産にマルがジョインいたしました。皆様どうぞよろしくお願いいたします。