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7月の某日。

茹で上がるような夏の暑さに、例年よりも薄着なKINPONが街を自転車で走っていた。

「暑いなぁ。暑い。暑すぎる。」

最近移転した、中之島の渋井不動産オフィスまでの道のりが永遠とも感じるのは、この暑さのせいだろう。それにしても暑すぎる。

そんな暑さの中、ポケットに入れていた携帯が震える。発信者は弊社代表取締役隊長、IPPASAだった。

「もしもし。」

「もしもし。」

「もしもし。ここだけの話なんだが、大阪市西区のいい場所に、いい区画が出たぞ。」

「いい区画…?区画というと、事業用の物件ですか?」

「そう、察しの通りだ。最寄駅は四ツ橋線の本町駅。しかもただの渋い箱ではなく、7.5坪のコンパクトな区画だ。そう、これから起業を考えている人にぴったりかもしれない。」

「たしかに、渋井不動産には毎日事業用の物件を探して欲しいと依頼が絶えませんからね。そんな物件、願ったり叶ったりじゃないですか。」

「しかも、本題はここからだ。聞いてくれ。その区画、内装がすでに渋い。スケルトンといえばそこまでなんだが、昭和30年代のRC造の渋さを知っているだろう? そう、そんな感じだ。しかも、その区画がインしてるビルもなかなか渋い。そして事務所利用だけでなく、店舗としても利用可能。こんな話他にあるか?」

「なんと。ところでIPPASA、肝心の賃料はいくらなんです??」

「賃料か。確かに大切な物件の詳細かもしれないが、そんな情報がどうでも良くなるくらいに素敵な箱なんだ。ヒントを出そう。かなり安い。」

「かなり安い?」

「そう、かなり安い。あとは送る写真を確認してくれ。そしてこの物件を探して実際に見てくれ。俺からは以上だ。オーバー。」

送られてきた写真を見て、私は驚愕した。この物件がまさか5万5千円だなんて。

真夏の果実とはよく言ったもので、この物件がまさにそう。西区の相場を狂わせる果実だ。

詳細は渋井不動産 KINPON宛に問い合わせて欲しい。内覧も可能だ。

以上、オーバー。

文:KINPON

物語:フィクション

物件:ノンフィクション

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  • 【事業用】KINPONとIPPASAの奇妙な通信、7.5坪の渋い箱。
  • 西区

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