幸星菴

靱公園の目の前に位置するレトロビルの6階に、自然と調和した空間で自分自身と向き合うことが出来る書道教室、『幸星菴』があります。

この度「自分自身と向き合いたい」と思い立ったマックスが、『幸星菴』主宰の書道家・伊藤さんに書道を学ばせていただきながら、教室を立ち上げた経緯や書道への思いを訊いてきました。

上手くなるために、“教える”
-マックス
仲介を担当させていただいて、もう4年ほど経ちますが、何度来ても本当に素敵な空間ですよね。あの時、ゴリ押ししましたもんね。「絶対ここにしましょ!」って(笑)。
-伊藤さん
もともとは、奥さんがやるネイルサロンと僕の書道教室を併設したいと考えていて、20坪くらいのサイズで探していたんですが、マックスさんに紹介されたこの物件が刺さって即決しましたね。すぐ奥さんに「ごめん、併設は出来ひん」って謝りましたもん(笑)。
サイズは小さいですが、何よりもこのロケーションにやられましたね。

-マックス
小学生の頃から書道を習い始められた伊藤さんですが、実際に教室を開くほど、書道にのめり込むきっかけは何だったんですか。
-伊藤さん
小学校からとは言っても、中学から大学生くらいまでは書道からは離れていました。25歳くらいの時に偶然、小学校の時に習っていた教室の先生と再会しまして、趣味で再び始めたんです。
教室に通う中で、その先生のさらに上の師匠の作品が大好きになって。江口大象という書家なんですが、彼に師事するようになりました。

そしてある時、彼に質問したんです。「先生のように上手くなるにはどうしたらいいんですか?」と。すると「教室を開け」と即答されたんです。そこからすぐ、自宅兼ではあるのですが教室を開きました。
なので、実は僕自身「教えたい」と思ったことは一度もないんですよね。
-マックス
「上手くなりたい」。その一心で動かれたということですね。

心を整えたい人が集まる場所
-マックス
自宅兼教室を8年ほど運営された後に、この『幸星菴』をスタートさせられましたが、教室にはどういった方々が学びに来られるのですか。

-伊藤さん
コンクールに向けて取り組む上級者の方、全く初めての初心者の方など様々ですが、特にクラス分けせず一緒に学んでいます。
書道に取り組むには、精神を落ち着かせ、心の乱れを整える必要があるので、そういった体験を求めてか、生徒さんには経営者の方も多いですね。
-マックス
ビジネスシーンにも活きるんでしょうね。仕事でアウトプットしている分、自らを内省する時間が必要になってくるというか。

-伊藤さん
僕より年齢も社会的地位も上の方が、「先生」と呼んでくれますからね(笑)。
-マックス
書道の先生って、長髪で髭で着物!みたいな怖いイメージがありますが、伊藤さんには、何でも相談したくなるような優しい雰囲気がありますよね。書道以外の相談もされたりしますか?
-伊藤さん
全然、人生相談とかもありますよ(笑)。
僕、普段バーの店長もやっているので、お話を聞くことは全然苦じゃないですね。バーの酔っているお客さんに比べたら、みなさんいい人だし(笑)。

-リサ
先生、最近寝つきが悪いんですが、どうしたらいいですか?
-マックス
それは、クリニックに行けよ。
伝統的な技術と洗練された空間の共存
-マックス
続いて、内装についてお訊きしていいですか。伊藤さんのこだわりがものすごく伝わってきます。

-伊藤さん
バーの常連客だった建築士さんの協力のもと、細部までこだわりましたね。
天井に和紙を使ったり、壁を鉄さびにしたり、木材にも塗料は用いないなど、「書道は自然のものだから、自然の素材と調和させる空間を」という、彼と僕のチャレンジが詰まっています。
とは言え、めっちゃケンカしましたけどね(笑)。「こっちは人生賭けてやってるねんから、お前も本気でやれ!」とかも言いました。
信頼してるからこそ、引いたり妥協したりはアカンな、との思いからです。今も普通に仲良いので安心してください(笑)。
-マックス
温厚そうな伊藤さんにそんなイメージなかったです(笑)。それだけ人生を賭けて作られた教室だということですね。
ここまでロケーションの選定や、内装デザインにこだわられる書道教室って他にあるんですかね。

-伊藤さん
正直、無いと思います。
書道って、どうしても“地味”というイメージが強いですよね。それって、技術ばかり優先して、空間デザインなど外側の部分に目を向けずに「書道とはこういうものだ」と、書道をやっている人たちが作り上げてきた慣習なんです。この辺が、書道の世界が抱えている課題だと思っていて。
僕は、伝統的な技術と最新の美的感覚は共存できると信じています。もちろん、オシャレなだけで技術が無いようではダメですし、逆も然りですが。

-マックス
書道教室って、閉ざされた地味な空間で開かれているイメージが強いですもんね。でも、こんな素敵な景色を見ながら学べる教室の方が絶対にいいですもん。字も確実に上手く書けそう(笑)。
ギターと同じ感覚で、気軽に
-マックス
これからの『幸星菴』の運営に関して、考えられている展望はありますか。

-伊藤さん
ありがたいことに生徒さんの数が100人を超えまして、そろそろ発表会を開催しようかなと考えています。地域の公民館とかではなく、どこかギャラリーを借りて。
また、僕個人の展覧会も大きな規模ではやったことないので、開催したいですね。
-マックス
伊藤さん個人としては、書道人生はこれからもずっと続くといった感じでしょうか。
-伊藤さん
僕は今42歳なんですが、書道家のピークは60代後半から70代前半だと言われてまして。そう考えたら今後も楽しみではあるのですが、もっと上の領域に行くためには、まだまだ自分自身足りていないと思っています。書道は、東洋思想や西洋哲学などの知識も必要になってきます。技術の向上もそうですが、勉強もして教養も身につけて、常に書道に触れる生き方をし続けていきたいですね。

-マックス
では最後に、伊藤さんにとって、“書道”って何ですか?
-伊藤さん
なるほど、そうきたか(笑)。
ん〜、「みんなが思ってるギターとかと同じ」ですかね。
色々語りましたけど、書道って皆さんが思うよりもっと身近なものなんです。マナーとか作法とか、なんか勝手に皆さんで難しくしてますけど、書き順や筆の持ち方なんてたくさんあるので、そこまで大事じゃないんですよ。
中学の時に、気軽に遊びでギターに触れるあの感覚というか、「書道ってそんなに崇高なものではないんだよ」ってことを伝えていきたいですね。
-マックス
ずっと持ち方気にしてました(笑)。書道が今後、より身近なものとして多くの人に広まるといいですね。

Photo by MIU
幸星菴
【住所】大阪府大阪市西区靱本町一丁目9−18 うつぼビル 603号室
【稽古日】HPをご覧ください
【HP】https://kouseian-hitotare.com