1月某日、天王寺にて
「天王寺駅すぐ、てんしば徒歩3分。8万円台で始める2人暮らし。」の取材時、バルコニーの扉がこのタイプだった。
こんなとき思い出すのは、以前働いていたスタッフが炎天下のバルコニーに小1時間ほど締め出されたという悲劇である。ドアノブが空回りして開かなくなったらしい。
あの頃わたしは入社1年目で、「締め出されました」と一報を受けた上司(広報部オザワさん)が、「5階はさすがに飛び降りられへんか」とつぶやいたのを鮮明に覚えている。
なぜ1%でも飛び降りられると思ったのだろう、とんでもない上司の下についてしまった。入社したてのわたしは、上司の思考回路と嘘のような先輩の不幸に少し肩を震わせた。
今の自分なら、「それって労災おりますか」くらいの加勢はできるだろうが、入社4ヶ月の新入社員の発言となると、ブルータスに裏切られたカエサルくらいエグいものがある。おまつ、お前もか。
その後、ニヤニヤしながら応援に向かった上司を見送り、自分は同じ轍(てつ)を踏むまいと心に誓った。
なのでこの扉のバルコニーを見ると、先人の教訓を活かし、全閉するのを避けるようになった。
これを読んでいる同業他社の方も、バルコニーの開き戸には用心して欲しい。いつなんどき、ドアノブがブルータスになるか分からない。
そうやって、わたしは今日も大阪のどこかで取材に奔走している。読者にお届けする記事を書く裏側には、思わぬ裏話が隠れていたりするのだ。