築年数不詳の希少物件
速報です。西区川口一丁目に希少物件が現れました。
「渋い」を凝縮したような当物件は、期待通り築年数不詳。調べ尽くした結果、昭和初期頃建築というフワッとした情報を手に入れたので、おおよそ100年足らずの築年数かもしれない、というフワッフワな可能性が伝われば本望です。
一説には昭和3年築という話や、華僑(外国に移住した中国の人々。その昔この一帯は中国人街だったそう)に対して大正時代に建てられた建物という話も出てきましたが、どれも確証には至りませんでした。
アール・デコ様式の外観は規則正しく直線やタイルが並び、アクセントに施された楕円の装飾やシンメトリーなパターンなど、細部にまで特徴が反映されています。
ちなみに竣工当時は3階建てだったそうですが、現在は紛うことなき2階建てです。その情報をインプットしてよく見ると、ところどころ色が違う屋根の部分に3階があったんだろうか、なんて面白い見方もできるので、ぜひ現地でまじまじとご覧くださいませ。
通称「川口アパート」と呼ばれる当物件は、いくつかの社名や表札が見受けられる店舗併用住宅。その一角には、激渋な純喫茶もございました。
こちらが「喫茶 水鯨(すいげい)」。まるで居留地時代にタイムスリップしたような店構えが、強烈に心を揺さぶります。
私たちは、喫茶店を日本の大切な文化財だと考えています。新しくお店をつくるよりも、素晴らしい喫茶文化を残したかった。後世に繋ぎたかった。(中略)喫茶『水鯨』は、この大阪の町で歴史を紡いでいきます。町に暮らし、町の文化を支える、町の人たちの憩いの場所として。
喫茶水鯨/HP冒頭より
ちなみに喫茶水鯨の内装は、50年の歴史に幕を下ろした金沢の純喫茶『禁煙室』を移築して作られているんだとか。禁煙室の名物、3色のクリームソーダも受け継がれています。そして昔ながらのプリンアラモードは、水鯨の庭から発掘された料理本のレシピを再現したもの。これ以上にドラマチックなメニュー秘話を、未だ私は知りません。
阿波座駅から橋を渡って徒歩6分。決して人通りの多いとは言えない場所ですが、平日昼でも満席になるほどの人気店です。
旧川口居留地とは
物件をご紹介する前に、このエリアの歴史にも触れておきましょう。
慶応から明治にかけての約30年間、この一帯は貿易の拠点として外国人居留地に定められていました。洋風建築が立ち並び、洋食屋やカフェ、中華料理屋のほか様々な工業製品や嗜好品がここから広まり、文明開化・近代化の象徴でもあったとか。
しかしながら、川口および当時の大阪港である安治川周辺は水深が浅く、大型船舶が入港できなかったため貿易港としては短命に終わります。その結果、貿易の拠点は神戸へと移り、川口の居留地制度も廃止。戦後は地味な倉庫街となり、当時の建物はおおむね解体されてしまいました。
が、そんな当時の面影を反映している貴重な建築物が写真左手の「川口基督教会」と当物件なのです。
1920年(大正9年)にかけて建設されたこちらは、生きた建築ミュージアム・大阪セレクションにも選定された建物。アメリカ人建築家ウィリアム・ウィルソン設計で、ヴィクトリアン・ゴシック様式のデザインが特徴です。
阪神大震災では半壊するも、半年間の復元・耐震補強工事により見事に復興。のちに国の登録有形文化財に登録されました。赤煉レンガの壮麗な大聖堂は、この地のシンボルとも言えるでしょう。
これほどの歴史がありながら、その面影を残す建物が残っていないということは、現存する貴重な近代建築「川口アパート」に空室が出たということ自体まさに奇跡のような出来事。お向かいにも歴史的な教会があり、お隣は激渋喫茶。にわかに信じられませんが、テンションが最高潮に達した今、まだ室内を見ていないということに気づきました。
希少区画のお目見え
お待たせしすぎました、ようやく物件紹介です。幻の空室は、1階中央に位置する事務所区画でございます。
外観とは裏腹に、室内は綺麗さっぱりリノベーションされた空間。慶応まで歴史をさかのぼって紹介していたのが信じ難い令和ビジュアルでした。
広さは13坪で、4〜8名規模のオフィスにするも良し、1〜2人でゆったり使うも良しのサイズ感。
東側の窓は木津川沿い。堤防があるためリバービューではないものの、裏庭のようなスペースに茂る緑がお楽しみいただけます。
用途は原則、事務所のみの募集です。新進気鋭のデザイン事務所や、ひとひねり効かせたいクリエイター、希少物件を追い求める企業さんなど、この機会にこぞってご内覧ください。
給湯スペースや水回りも確保。ガスコンロは使えませんが、IHを持ち込めばカップラーメンくらいは出来るはず。
トイレや洗面も設置済み。ウォシュレットは無いものの、洋式というだけで十分ではないでしょうか。むしろ慶応のままでなくて一安心です。
西区川口に現れた希少区画、いかがでしたか。
様々な歴史的建築物が無念にもどんどん解体されていくなか、歴史の面影が感じられる建物が現存するのは、それだけで希少価値が高いといえましょう。
私から言えることは、ただひとつ。とにかく現地で建物を見てください。ただそれだけです。
お問い合わせは、渋井不動産まで。
【良かった点】
◎希少な歴史的建築物
◎室内フルリノベーション済み
◎簡易キッチン、水回り設備確保
【気になった点】
△駅からのアクセス