2025年No.1の邦画

歌舞伎の世界を渡り歩く男の生き様を描いた映画、『国宝』が空前の大ヒットです。
6月6日に公開して以降、その人気はとどまることを知りません。興行収入100億円超えも目前と言われ、もし達成すると、2002年公開の『踊る!大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』以来、なんと23年ぶりの快挙です。
もちろん『国宝』僕も観ました。いや〜ものすごかったです。3時間という長さを全く感じない素晴らしい映画でした。トイレはめっちゃ我慢しましたが。

映画の中で、歌舞伎の様々な演目が取り上げられていますが、中でも一番印象的だったのが『曽根崎心中』。物語の重要なシーンを担う歌舞伎の演目で、特に主演の吉沢亮と横浜流星の怪演っぷりに、涙を流した方も多いはず。
もともとは近松門左衛門作の人形浄瑠璃で、1703年に実際に起きた事件をもとに書かれた物語です。ざっくりどんな話かというと、
大阪の醤油屋の手代・徳兵衛と、遊女・お初は深く愛し合っていた。しかし、周囲の妨害や金銭的なトラブルから二人は一緒に生きることができないと悟る。絶望した二人は、最後まで一緒にいようと心中を決意し、曽根崎の天神森で命を絶つ。
ーーWikipediaより引用
つまり、決して許されない愛に燃える2人、、という設定が江戸時代の人々にウケたわけですね。

そんな『曽根崎心中』の舞台となった露天神社 、通称・お初天神は、大阪の梅田にあることを皆さんご存知でしょうか。

大阪駅前ビルや北新地の近く、飲み屋などが多く建ち並ぶ繁華街の中にその姿をとどめています。
“恋人の聖地”お初天神

意外と中には入ったことのなかったお初天神。高層ビルの目の前にある鳥居をくぐります。

お初と徳兵衛の悲恋にちなみ、神社を挙げて“恋人の聖地”を全面にアピールしていました。

ちなみに隣はラブホテルでした。お初と徳兵衛の愛の力に負けじと、恋人たちが愛を確認できる場所が設けられているんですね。素敵。


入り口は3つあり、それぞれ3方向から境内に入れます。お初天神への参道がそのまま商店街になった、「曽根崎お初天神通り」が西側の鳥居から伸びています。
梅田で若者が飲みに行く時、「お初天神で飲もうや」という言い方をするなど、もはや神社という位置付けではなく、《お初天神=飲み屋街》という図式が現代大阪人の常識になっています。


ハートの絵馬が大人気

境内はこんな感じ。カラフルでポップな装飾が、厳かすぎない親しみやすい空間を演出していました。


印象的だったのは、ハートの絵馬。ここに恋人や、片思いの相手に対して願いを綴れるとあって、女性を中心に大人気だそうです。この日も若い女子たちで賑わっていました。K-POPや旧ジャニーズなどの推しアイドルに対するメッセージも数多く観られましたね。「チケット当たりますように」には、なんかちょっと違うやろと思ってしまいましたが。

お初と徳兵衛が優しく見守る


本殿の向かい側には、「曽根崎心中 ゆかりの地」を表す一角がありました。実際にこの場所で2人は心中をしたんですよね。神社側からすると「こんな所でやめてくれよ。メンヘラすぎるやろ」と思ったでしょうが、当時の人々にはセンセーショナルに受け止められたんでしょうね。


銅像の目の前にある手水舎には、「奉納 三代目中村鴈治郎」という文字が刻印されていました。かつて日本を代表した女形で、自身も『曽根崎心中』でお初を演じた大物歌舞伎役者です。中村玉緒の旦那さんですね。
『国宝』を観た直後だったので、「歌舞伎やん!歌舞伎やん!」と1人でテンションが上がっていました。

梅田駅からは徒歩5分ほどで辿り着けるお初天神。
好きな人と結ばれたい方は、お初と徳兵衛の愛の力を感じて、『国宝』を観た方は、『曽根崎心中』に人生を捧げた喜久雄と俊介に思いを馳せてみては。
以上、ある日ベロベロに酔っぱらい、間違えてマンションの別の部屋に入ってしまいそうになったことのあるエピソードのみが吉沢亮に似ている、エイキチからのレポでした。