omelet

南堀江の隅っこにあるマンションの1階。人通りの多い堀江の、路地に入った場所にお店を構える、Tシャツをメインとした古着屋『omelet』。

オープン1周年を記念して、この度仲介を担当したGOが店主の湯田さんにインタビュー。南堀江という街のことや、Tシャツ屋ならではの苦労話など、思う存分伺ってきました。
作らざるを得なかった“2店舗目”

-GO
湯田さん、『omelet』1周年おめでとうございます!
-湯田さん
ありがとうございます!

-GO
中崎町で経営されている古着屋『Kchup Rice』の2号店という位置付けで始められた『omelet』さんですが、最初はお店というより倉庫をお探しだったんですよね。
-湯田さん
1つ目のお店『Kchup Rice』を始める前、オンラインで古着を扱っていたのですが、とにかく服の在庫が溜まるんですよね。オンラインはやはり「新入荷」が求められるので、どうしても過去の在庫を抱えていく一方で。当時実家だったので、溢れかえる在庫に親が悲鳴をあげていました(笑)。
なので、1店舗目の時もそうだったのですが、この『omelet』も店舗というより、在庫を置く場所として探したテナントだったんです。
-GO
戦略的というより、衝動的ですよね。古着に対する愛が溢れて2つのお店を経営するに至るという。すごい情熱です。
ちなみに、店名はなぜ『ケチャップライス』だったんですか。

-湯田さん
なんとなくカッコいい系の名前は避けようと考えていて、飲食店っぽい名前がいいな〜と。最初は『バターライス』がいいなと思っていたんです。そうしたら、当時の彼女が『ケチャップライス』を思いついて、「めっちゃいいやん」となり、決めました。
-GO
最後に彼女がケチャップをかけてきたわけですね(笑)。
-湯田さん
まあ、その直後に別れたんですけどね(笑)。
南堀江と中崎町の違い
-GO
1年間、この南堀江でお店を運営されて感じる、中崎町との違いは何かありますか。

-湯田さん
ここは南堀江と言っても、オレンジストリートから道を1本隔てた場所にある、いわゆる“ザ・堀江”とは言えない落ち着いたエリアです。
中崎町の店舗は、古着屋が多く入るビルの2階なので、学生など古着好きの若者が多く流れてきますが、こっちはファミリー層が多いですかね。1階路面なので、ベビーカーでも入りやすいんですよ。ソファもあってゆっくり出来るので、のんびり買い物が出来ます。
ただ中崎町の場合は、他のお店のお客さんも多く流れてくるのですが、南堀江の『omelet』はわざわざ来ないとたどり着けない場所にあるので、暇な時は究極に暇を感じます(笑)。

-GO
フォトスタジオとして長年使われていたこの物件を、路面店かつ広さも充分ということですごく気に入られてましたが、場所自体はマンションの駐輪場に向かう導線上という、少し奥まった場所にありますもんね。
-湯田さん
最初は、メジャーリーガーのマイク・トラウトの顔写真Tシャツを看板として掲げていたのですが、「何屋さんかわからない」と言われまして(笑)。
-GO
尖りすぎでしょ(笑)。

-湯田さん
今は「古着屋」とわかるTシャツを看板にしているので、前より認知され、お客さんも増えてきていますね。
ウィンドウショッピングとして流れてくる方も多い中崎町と、わざわざ足を運んでくださる方が多い南堀江。客層や年齢層もまるで違うので、戦い方も変わってくるなと感じています。
Tシャツブームにのって
-GO
湯田さんは、いつ頃から「Tシャツ」というものに目をつけ始めたんですか。
-湯田さん
10年以上前、20代前半の頃ですかね。今でさえ当たり前ですが、オンラインのみでTシャツを扱うというスタイルは当時少なかったんです。在庫としても冬物に比べたらかさばらないし。とは言え、溢れかえったんですけど(笑)。

-GO
そこから時を経て、今や巷では有名な「Tシャツ屋さん」ですもんね。
-湯田さん
コロナに入ってやってきたTシャツブーム。時代が下り、90年代の品がフォーカスされるようになってきました。その時点で、僕はすでに様々なTシャツを持っていたので、注目されやすかったのかなと。始めるタイミングが早かったので、ラッキーだったと思います。
-GO
新規参入する人たちとは、すでに差が生まれていますもんね。

-湯田さん
イベントに呼ばれたり、「Tシャツに詳しい古着屋」としてテレビ出演もしました。うれしかったのは、東京の全く面識のない古着屋さんが、「大阪でTシャツならココ」と、テレビ関係者にオススメしていたこと。そんなところでも認知されているんだと感じました。
-GO
同業他社にそう言わしめるってすごいですよね。Tシャツという武器を前面に押し出していたから、そういった広がりを見せたんですね。
“2度のSNS凍結”という災難
-GO
『omelet』オープンされて、この1年で苦労されたことはありますか。

-湯田さん
『ケチャップライス』のInstagramアカウントが2回凍結したことですかね。
現代って告知のメインはほぼインスタじゃないですか。使えなくなった時はマジで「終わった」と思いましたね(笑)。
-GO
一体、何がきっかけだったんですか。
-湯田さん
1回目は、なぜか4〜5年前に投稿した、タバコメーカーのロゴが入ったTシャツがきっかけでした。インスタの運営側から来たメールを見逃して放置していたんです。そうしたらいきなりの凍結。当時フォロワーが1.2万人いたアカウントが一瞬にして使えなくなったんです。

-GO
それはキツいですね。そして、その後すぐにアカウントを作り直されましたが、、
-湯田さん
作り直して数ヶ月で2回目の凍結を喰らうことに。次は、薬物系のメッセージTでした。マリファナは合法の国もありますが、薬物は全世界で一発アウトだからでしょうね。
-GO
1回目がタバコでアウトだったので、ヤバそうな気はしますが、、(笑)
-湯田さん
完全にやらかしましたね(笑)。
「SOLD OUT」の投稿だったのですが、おそらく「売っていた」「商業目的」だということが良くなかったようです。
インスタの復旧に向けて、弁護士事務所の無料相談も行きましたが、運営元のmeta社があまりに巨大企業なので、戦っても厳しいだろうと言われました。

-GO
泣き寝入りするしかないと。
-湯田さん
そうですね。紐付けされているという理由からか、プライベート用のアカウントも凍結されましたからね。なんか、悪の黒幕みたいにさせられて(笑)。辛すぎました。
おかげさまで、インスタの規約には詳しくなりましたね。めっちゃ寄りで撮影するとか、値段を表記しないとか。

-GO
聞いていると、Tシャツ屋ならではの苦悩といった感じで興味深いですね。ご本人は大変だったと思いますが。
-湯田さん
大変でしたが、アカウントを作り直した後、他の古着屋など全国の同業者たちが拡散してくださり、横の繋がりを感じるきっかけにはなりましたね。本当にありがたかったです。
これからもこの場所で走り続ける
-GO
古着の仕入れ自体はどのように行われているのですか。

-湯田さん
主に海外で買い付けを行なっています。
当たり前ですが、Tシャツって世界中に溢れていて、モノの数自体がめちゃくちゃ多いので、良いモノを選ぶのがすごく大変なんです。この間も海外の卸倉庫で、丸一日ひたすら無心で選別してましたからね(笑)。
勘違いされやすいですが、店頭に並ぶこれだけの量を見ると、大手の量販店みたいに大量購入していると思われがちですが、決してそんなことはなくて。僕が、7年以上の時間と労力をかけてちまちま集めてきた、選び抜かれたほんの一部なんです。

-GO
だいぶフィルターがかけられた少数精鋭なんですね。僕たちは店頭に並んでる商品が全てだと思っていましたが、裏側にはすごい努力が隠されているんですね。
-湯田さん
現地のディーラーとの関係性も築かないといけないですし。これだけ国内に古着屋が増えると買い付けのライバルも増えますから。いかに同業他社より良いものを仕入れてくるかの戦争なんです。

-GO
そういった大変さがある中でも、やはり古着屋という仕事はやりがいがありますか。
-湯田さん
「自分自身の目で見て仕入れた商品を、実際にお客さんに提供して喜んでもらう」というのは、やりがいがある仕事だなと思います。
また、ネットショッピングではヒットしないような、うちでしか買えないような物を売っていきたいと常々思っています。ネットの相場や価値観に合わせるのって面白くないんですよね。あくまで自分自身で価値を載せて、自分自身の基準で物を売るのが楽しいんです。じゃないと、店舗を構えて自分のお店をやっている意味がないと思っているので。

-GO
素晴らしいお考えですよね。湯田さんとお話していると、古着に対する愛を感じます。
-湯田さん
走り続けるしかないだけなんですけどね。ディーラーとの関係も続けていかないといけないし、仕入れた分が全て売れるわけじゃないので在庫も抱え続けていかないといけない。それが、僕の選んだ仕事なんですよね。
-GO
止まることなく泳ぎ続けるマグロみたいな生き方ですよね。
もしまた在庫が収まりきらなくなった時は、物件探しのお手伝いをさせていただきますので、ご相談ください(笑)。
-湯田さん
ありがとうございます。これからも当分は中崎町と南堀江で頑張っていきます。あと、インスタの凍結にも気をつけていきたいと思います(笑)。

omelet
【住所】大阪府大阪市西区南堀江1-18-27 四ツ橋セントラルハイツ101
【営業時間】平日15:00- 土日祝13:00-
【定休日】不定休(Instagramをご確認ください)