俺は今日、彼女と部屋探しに来た。求める条件はただひとつ、カッコいい部屋だ。
連れてこられたのはとあるデザイナーズマンション。
俺は昔、喧嘩に明け暮れていた。鉄パイプひとつで相手をなぎ倒し、もう数え切れないほど喧嘩をした。そんな俺にふさわしい鉄パイプの籠城といえる。
ふと見上げると金網の通路が。この部屋はメゾネット、上階にも洋室があると聞く。
ん・・待てよ。彼女がここを歩いた時、下から・・。
もうこの部屋に決定だ。一国の大統領でもこの決定は覆せないほど、俺の意志は固い。明日にでも住みたい。この場所こそ、俺が求めていたユートピア。
だが、そんな使いづらすぎる洋室の一件も、このバルコニーで霞んだ。素晴らしい景色だ。
アメリカのラッパーがここでPVを撮影してそうで、かなり気に入った。
何も悩むことはない、俺の気持ちはこの青空のように澄み渡っている。
そう思っていた。
俺が見てきた天六のデザイナーズは、パイプと故人への愛に溢れた物件だった。
オカルトなんて信じない、目に見えるもの主義の人にとっては、いいのかもしれない。しかもSOHO可、事務所で使用してもこんなにカッコいい空間は他に無いと思う。
ちなみに俺はというと、まだ部屋探し中だ。