戸は好きですか
突然ですが、皆さまは戸(と)が好きですか。藪から棒に何言ってんだってことは分かってます。いや、この場合は藪から戸でしょうか。
しかし、本日は「戸」について書きたいので、戸が”好き”または”普通”というテイで話を進めさせていただきます。というわけで、とっとと戸の話を始めましょう。レッツ・トー。
まずは戸の種類について。私たちが普段開け締めする戸は、ざっくり分けると「折り戸・引き戸・開き戸」の3種類に分かれます。
もっと細かく分けるなら、開き戸でも片開きや両開き、観音開き、スイングドアなんかもあったり。ちなみに渋井不動産が事務所を構える大阪農林会館は、両開きの2重ドア。大きな荷物の搬入出や、多くの人々が出入りする公共建築などに用いられることが多いのがこの両開き戸の特徴です。
というわけで、今回は基本の3つを掘り下げていきましょう。
折り戸について
最初にご紹介するのは「折り戸」。こちらは、二枚の板を折りたたむようにした戸を指します。
開口部の左右いっぱいまで開くことができるため、広い開口が求められるクローゼットなどに多く見られる仕様です。また、間仕切りや窓として用いられた場合には抜群の開放感を発揮します。
その他、お風呂の戸やバスの出入り口など、よくよく考えると多くの場面で使用されているのがこの折り戸です。
引き戸について
続いては「引き戸」について。襖などの左右に引いて開閉する戸で、家政婦は見た!の市原悦子が見聞きするのがだいたいこの引き戸越しになります。
そもそも引き戸と聞くと、手前に引いて開ける戸をイメージする方も少なくないでしょう。なぜガラガラする方が「引き戸」になったのか、その由来は調べ尽くしてもハッキリわかりませんでした。
一説には、昔の引き戸は滑りが悪く、開けるときも閉めるときも「引きずる」ことからきているとか、「戸袋に引き込む」動作からきているなど、信憑性は不明ですが確かにそう言われると一理あります。
ちなみにGoogle日本語辞書の「引く」には以下の表記があるため、言葉のチョイスとして間違いではないようです。
- 引っ張って移動させる。[引・曳・牽・挽] 「車を―」
- 地をすって行く。引きずる(ように動かす)
一口に引き戸と言ってもその種類は幾つかあり、ドアの枚数やレールの位置によって少し名称が異なるものの、基本は4種類に分かれます。
概ね図で瞭然かと思いますが、右端の引込みタイプについては壁の中(戸袋)にドアが隠れる仕様です。壁の色で遊びすぎちゃった結果、分かりにくくなりすみません。ついお茶目な部分が出てしましました。
ちなみに引き戸のメリットは、
- 老若男女問わず開閉がスムーズ
- 可動域が狭く省スペース
- 通気性に優れている
が挙げられます。勢いよくバタンと閉まることが無いので、小さいお子様がいるご家庭でも安心して開閉できるというのは大きなポイントでしょう。
開き戸の歴史
そしてこちらが、勢いよくバタンと開閉しがちな「開き戸」。
平安時代に登場した引き戸(遣戸/やりど)に対し、飛鳥時代や奈良時代の住宅・寺院・神社にはいずれも開き戸が使用されていました。つまり、開き戸の方が歴史は古いのです。
なお、開き戸のメリットとして挙げられるのは、「気密性と防犯性の高さ」です。空気や音が漏れにくい開き戸は、外気をシャットダウン、遮音にも優れています。
そして「防犯性」については、玄関戸の内開き・外開きについても言及せねばなりません。
私もこの記事を書くまで玄関は”外開き”の戸が一般的だと思っていました。が、実は世界的に見ると”内開き”が標準で、日本の玄関に外開きが多いのは室内で靴を脱ぐ習慣に適した結果なのだとか。また、雨が多い日本の気候的にも、雨風が入りにくい外開きの方が良いと言われています。
同じ理由でスウェーデン・ノルウェー・フィンランドなど冬の気候が厳しい北欧も、雪を室内に吹き込ませないために外開きが多いそう。さらには、「小さめの開口スペースで外気の侵入を抑え、室内の温度を下げない」といった地域特有の工夫もなされています。
対して内開きの玄関戸のメリットは、ずばり「防犯性の高さ」これに尽きます。恐らく読者全員が「せやんな」となっていますね。せやねん。
内開きであれば仮に不審者が押し入ろうとしても、家の中から全体重をかけ戸を抑えたり、物で塞いで戸が開かないようにすることが可能なのです。
イタリアでは蝶番(ちょうつがい)が外に出ている外開きは防犯上ありえないと言われることもあり、これは蝶番を破壊されると簡単に扉が開けられる可能性に起因します。
また、防犯面だけでなく、「大切なゲストを歓迎して中に招き入れるため」「外開きの場合、戸が雨風にさらされる機会が増え傷みやすい」などの理由もあるようです。
以上のことを考慮すると、玄関戸はその土地の生活様式や気候が反映されているのが分かります。日本において戸や窓を含む「建具」の原型は中国から伝えられた衝立や屏風にあると言われており、長い年月をかけて形や材質、用途が変化・改良された歴史を感じました。
いかがでしたでしょうか。戸が「好き」または「普通」の皆さま、お楽しみいただけましたでしょうか。
調べると意外と奥が深く、私自身も非常に勉強になりました。こうした知識を知ったうえでお部屋紹介を見ると、また新しい視点で楽しめる気がしますね。
では、これにて当記事は”戸締まり”させていただきます。以上、広報部おまつでした。
※参考ページ
玄関ドアの開き勝手について/アイエムドア
扉の事例詳細/レファレンス協会データベース