遡ること8月上旬。ちょうどサメさんが我々にお盆休みを付与してくれていた頃、とある物件に目をつけていた人物がいた。

渋井不動産ディレクターのトモである。”プロのトランペッターが不動産屋に入社する”という異例の人事から早3年。ゴリゴリのお高めデザイナーズしか眼中になかった彼女も、ここ数年で多くの良質な築古物件に触れてきたことで、琴線がアップデートされてきたのだという。
所在地は中央区上汐。独特な”品”が漂うこの閑静な住宅街地に、「イイカンジの渋い2DKがある」と、賃料もリフォームも未確定な一室にポテンシャルを見出した彼女は、おおよそ2ヶ月かけて進捗状況を執拗に地道に確認し、ついに掲載にこぎつけたのである。
執念の最上階2DK

では、そこまで追っていた物件とは一体どんな部屋なのか。マンションは昭和55年築の紛うことなき築古なものの、オートロックやエレベーターはそつなく完備されている。
たどりついたのは最上階のワンフロア2戸。視界右端にある火災ベルから雨ざらしにされた年月を連想させるものの、最上階角部屋という響きの前ではそんなサビ具合も気にしてられない。

玄関扉を開けると、非常にスタンダードな玄関まわりが現れた。土間には小ぶりなシューズボックスが鎮座し、「なんぼ靴あったって結局、足は2本やからね」という真理を優しく突きつけてくれる。ほな最低限でええかあ、という心構えで収めて欲しい。
トイレや水回りの白いドアは新調されており、リフォームアップを心待ちにしていたトモもニッコリな輝きを放っていた。




ややタイトめな洗濯パンを目の当たりにし、ドラム式洗濯機が置けるかをシミュレーションするトモ。「ここの幅ならドアの開きが⋯」と熱心にパカパカしている様子は、採寸したら一発で分かるのでは?という一言すらも投げかけられない鬼気迫るものがあった。
8帖+6帖のメインスペース

続いて8帖のダイニングキッチンへ。大きな南向きの採光面から、明るく朗らかな食卓が連想できる。

角度を変えると、白く輝くキッチン。コンロは自主設置なものの、これまた新調されたと思しき眩しさだ。冷蔵庫置き場のサイズについては、シミュレーションの鬼・トモまで問い合わせて欲しい。

ダイニングキッチンの隣には6帖洋室。中央の引き戸を開けっ放しにすると、14帖のLDKとしてもお使いいただける。寝室は別にあるため、恐らくここは常時開けっ放しになるだろうか。
パートナーと冷戦に突入した際や、インフルでダウンして隔離したいとき、または一人暮らしで突然人が尋ねてきたときなど、様々な場面で「あって良かったな」と思わせてくれる引き戸に違いない。

なによりも、この2部屋にかかる南向きのバルコニーが良い。屋根なしというネガ要素も、「最上階だから」の一言で押し切れてしまう開放感がある。
こう連日、雨が降っている時期に言うと説得力が半減するのは承知のうえで「洗濯物がよく乾きそう」という感想も述べさせて欲しい。

ちなみに、眺望は先祖代々ビュー。冒頭のトモ登場シーンに写っていた寺がここにきて伏線回収である。おおよそ2ヶ月かけてこの物件を追い求めていたトモも、この眺望はやむなしと背中で語っていた。
7.5帖寝室と収納

ラストはカーペット敷きの7.5帖洋室。ここにも別途南向きのバルコニーに面している。
それにしても、床がカーペット敷きになるだけで、途端にオフィスのような面構えである。在宅仕事の場合、ワークスペースは問答無用でココだろう。オフィスチェアをシャーしても下階に響かないのが良い。

唯一の収納はこの容量。高さはちょうどトモの身長くらいで、横幅はトモ5〜6人分ほど。
さすがはリスクマネジメントの鬼なので、どこに入っとんねんと炎上する可能性を見越し、しっかりとスリッパを履いて、触れるか触れないかの塩梅でハンガーポールに手を添えるといった対策がなされている。

アクセスは大阪メトロ谷町線・堺筋線『谷町九丁目駅』、近鉄『上本町駅』徒歩5分。トモが見つけた、ともに5分の一室である。
正直、当物件は「普通」の部類に入る部屋かもしれない。それでも、星の数ほどある「普通の部屋」の中から「普通やけどなんかイイ部屋」をセレクトするのは、ディレクターのセンスや感性が非常に問われるのだ。
おおよそ2ヶ月もひとつの部屋を追い続けたトモならば、きっとあなたの部屋探しを終わらせられる。まずはお気軽に、ご相談を。
以上、渋井不動産でした。